葛飾北斎「冨嶽三十六景」



冨嶽三十六景「本所立川」は北斎の騙し絵 其の二






1 葛飾北斎画「富嶽三十六景 本所立川(ほんじょたてかわ)」は北斎の騙し絵です。


(1) 葛飾北斎画「富嶽三十六景 本所立川」


図1 葛飾北斎「富嶽三十六景 本所立川


図1 葛飾北斎「富嶽三十六景 本所立川」  

富嶽三十六景 - Wikipedia
より引用 


(2) 葛飾北斎画「富嶽三十六景 本所立川」の解説

「本所立川」の作品解説は『「富嶽三十六景 本所立川」は北斎の騙し絵其の一』に記載してますその中から一つ掲載。



材木の林からかいま見る富士

立川は運河の堅川のこと。この運河が墨田川の交わるあたりには、材木問屋の材木置き場が多く有った。この図では、「西村置場」の表示があり、材木の墨書にも、「新板三十六不二仕入」など、ちゃっかりと版元の宣伝が描きこまれている。北斎は材木や積み上げた薪の高さを誇張した。鋸引きされる材の向きが、材木に隠れた富士を指し示す。

 大久保純一 「千変万化に描く 北斎の富嶽三十六景」 小学館 2005年刊より引用




(3) 『本状立川」の木挽職人が主役


木材の西村置き場の真ん中で、職人が木材を木挽しています。その木材の先に富士山がいます。「本所立川」の中心となる部分です。」




画面の真ん中にいて、
木挽きしている木材は富士山へ向かう
この絵「本所立川の」中心部ですね



あ北斎同好会


う〜む いい描き方だね


これがだまし絵?
 図2 「本所立川」の木挽職人、木材の先に富士山

図2 「本所立川」の木挽職人、木材の先に富士山
       


江戸の浮世絵好きのおばちゃんは鋭い指摘をしてます。 木挽職人の足が平行になっている。これでは力が入らないネ

北斎の「富嶽三十六景 遠江山中」の木挽き職人は両足とも前方に足を向けています。この足の方向が力が入る方向です。


木挽職人の足が平行になっている
これでは力が入らないネ

あ北斎同好会


普通は「遠江山中」の木挽職人のように両足とも前方に向くよ
図2 「本所立川」の木挽職人、木材の先に富士山 






図3 「本所立川」の木挽職人の足の位置
     富嶽三十六景 遠江山中

図4 北斎の「富嶽三十六景 遠江山中の木挽職人と足の位置」




(3) 『本状立川」の木挽は騙し絵



ここで、じっくりこの木挽職人を見ていた「あ北斎同好会」のごん太が騙し絵だといいます。

@木挽されている木材の上部が木材置き場の木材に突き当たります。
木材置き場の木材は木材置き場の枠木に密着して置かれています。木挽されている木材の赤く着色した部分は木材置き場の木材の中に食込むことになります。しかし北斎はそこの空間が有るように描いています。

A木挽されている木材の下部が赤く着色した部分で竹束にぶつかります。木材支えは一ヶ所しかなく安定な作業はできません。

B木材材置き場のこのような狭いところで木挽をすることはないと思います。

「本所立川」の中心部にある木挽される木材の先が富士山にあたることを優先した構図が、騙し絵になってしまいました。






@木材の上の先が
突き抜けている。




A木材の下の先は
竹束に突き当たる




Bこんな狭い場所で
木挽をするとは
とんでもない。







あ北斎同好会


 図5 「本所立川」の木挽きしている部分

図5 「本所立川」の木挽きしている部分





あ北斎同好会
木材置き場の各部の長さを推定。

@各部分の長さを求めます。職人の体の部分と木片の長さから推察して、木片の長さを40pとします。

A木片40pを基準として、竹束の上側の長さは55p、木挽職人がいる空間の横の長さは137p。

B竹束上部から木材置き場の枠上部までは241p

C地面を当方で勝手に決めて、そこから竹束上部まで143p
 
図6a 「本所立川」の各部分の長さ

図6a 「本所立川」の各部分の長さ





前回「だまし絵 其の一」で騙された「あ北斎同好会」の源蔵会長は今回は平面図まで作り検討しました。



今回は平面図まで作った

木挽されている木材が木材置き場の木材の中に食込んでいるのがわかった


あ北斎同好会 源蔵

木材置板を設置しないと
切断する木材は安定しない

こんな狭いところで木挽作業はできない


これは北斎の騙し絵です



そうだね さすが物知り先生

あ北斎同好会
 


図6b 「本所立川」の木挽部分の平面図





切断片が木材にのめり込み竹束の所までしかなく、
木材切断の場所としては不適当ですが、

原画から作った平面図に違和感が有ります。間違いにきずいた人は教えてく下さい。


基本的に、幅137cmほどの空間に大きな木材切断の作業場所を設置するとは考えられません。「本所立川」の作品で画面の中央に木挽職人を描くために、北斎が作った作業場所です。

木挽職人の周りに、水の空間を描き、左の積上げた木材よりも高い位置で作業することにより、鋸職人の周りの空間は広々として、鋸を挽く姿に違和感はありません。読者は、その続きで切断される木材の左側には、木材が安定しておかれる空間があるのだと勝手に納得してしまいます。しかし注意深く眺めると、切断される木材の左側には空間が無く、竹束が有ることに気づきます。

だまし絵としては、一級品とは言えませんが、最初に眺めたときには気づきませんでした。北斎がこのよう意図的なだまし絵を描くとは思っていなかった為です。
「本所立川」の働く三人の職人がすべてだまし絵になっていることに驚き、にんまりとして描いている北斎の姿が浮かんできました。







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